< たんじゅん農法実践者交流会報告 >

6月19日、今年も安曇野で3年連続となるたんじゅん農法(炭素循環農法)の実践者交流会を開くことが出来ました。台風が接近中でお天気も朝から大雨というあいにくの天候にも関わらず、30名を越える参加者が地元安曇野近辺から、県内各地から、そして山梨や群馬などの隣県からも来て下さり、関心を持っている人の広がりを実感しました。特に、新規就農者(私も含め)やこれからの就農希望者の中で、この農法に光を感じ、どうやったら実践できるだろうかと構想を練る人たちが大勢いることを改めて知ることになったわけです。

そういうバックグラウンドがある人たちの前で、素晴らしい状況の圃場と作物を実際に見てもらえれば最高だったのですが、申し訳ないがまだまだ私の圃場では実力不足でした。微生物量を倍増させて土壌の団粒化深度を進化させるこの農法の成果が表れているところと、まだまだのところとのばらつきも多く、これからの課題がいくつも見えてきた機会となりました。

一つはこれまで使ってきたキノコ廃菌床(エノキ栽培)C/N比(炭素率)の低いことが最近分析結果としても出てきて、もみ殻やバーク等の炭素資材の量が充分でないと腐敗に傾きやすくなっていたと考えられます。表面に薄く散布(1センチ以下)での施用を標準としてやってきましたが、その表面にどうしてもミミズが集まりやすいので、この分析結果はある程度予想していたのですが、「キノコ菌(糸状菌)がある」という事をメリットと勘違いし重視して使い続けてきたことがメリットになっていなかった可能性があります。必要なのはキノコ菌ではなく、キノコ菌のエサである炭素なのです。1年目・2年目は順調に土壌深度が深くなってきている様子を観察し続けてきましたから、3年間使い続けてくる中で、だんだんと弊害要素となってきたのかもしれません。

もう一つの課題として、水はけがあります。今まで想像していた「水はけのよい畑」の考え方をゼロから見直してみたいのです。「土の中の微生物(糸状菌)は水はけがよければよいほど元気になり、作物の成長がよい」ということがたんじゅん農法実践者の実証でどんどん明らかになってきているからです。「作物を育てるのに水は要らない。水分があればよい。」という、たんじゅんで明快な原理が、私達の畑でも垣間見えることがあります。

わかりやすいのは加工トマト。雨の多い年は不作です。もうほぼ例外はありません。雨の少ないカラ梅雨やカンカン照りの夏程出来がいい。これまでは雨が多いと湿度過多で病気になりやすい環境だからだと考えてきたのですが、だったらなぜ湿度過多が病気になり易いのかをモット追求していかなくては進歩がないことにやっと気が付きました。

日本という国は相対的に見て雨が多い国です(平均で年間1718mm)。 これ以上の降水量があるのはインドネシアやフィリピン・ブラジル等の熱帯雨林を抱える国です。日本の位置する緯度でこの数字が出る国はニュージランドだけ。肥料栽培の農法では雨前に肥料を畑にふっておけば、水に溶けた肥料成分の吸収が容易に行われ、成長の結果が早い。そういう感覚が自分の頭から抜け切るにはまだ練習が要りそうです。

実際には畑や果樹園に穴や溝を掘りそこに木質や炭素資材を埋めて物理的に透水性をあげる方法、高い畝で栽培する方法、黒マルチなどで雨の浸透を防ぎそのまま畑の外へ流してしまう方法など、いくつも具体的なものが考えられます。原理が見えてくると、ますます農業は面白くなってきますね。

穂高の実践者・マツザワさんの畑には見事なレタスが育っていました。炭素資材だけで大きさが見事なだけでなく味も爽やか、腐らない野菜が育っています。あちこちの実践者の畑を実地に見学できるのもこの交流会の醍醐味です。

松村 暁生  akiteru89@gc4.so-net.ne.jp

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