転換 より抜粋

植える


種類

植える
根の深さ cm
トウモロコシ 230
ハクサイ 170
ニンジン 150
ナス 140
キャベツ 120
コムギ 120
ダイス 100
トマト 100
ホウレンソウ 100
イネ 80
ジャガイモ 80
新規開墾や転地返しで、リセット状態の土では、いきなり何でも育つというわけにはいきません。土を教育し自給自足での、養分供給回路(作物と共生関係にある微生物)を整える必要があります。
清浄度、肥沃度、共に転換初期は表層部から徐々に良くなります。成長に従い根の張り具合が変われば養分供給場所(深さ)も変わります。そのため急成長あるいは停止や病虫害が出たりもします。また、場所により生育ムラが起きたり、育つ作物の種類が限定されます。

作物毎の根の張る深さは、土壌状態や生育状態などにより、一概には言えませんが、 土壌改良が進めば圃場周辺部の生育状態から考えて、画像( 野菜の根はどのくらい広がるの?[野菜の語り部・チューさんの野菜ワールド] )以上の根域が形成されると思われます。根が広く浅い作物は高い肥沃度が要求される代わり、比較的初期から良くできます。深く広いものは、低肥沃度でも全体の清浄度が高くなければならないわけです。
圃場周辺部の生育状態:
圃場外には養分が殆どない。道路などで踏み固められ根が張れない。など、外周部分は根が半円状にしか広がれず片側が使えないため、転換初期には1~3m巾ほどの範囲の成育が劣る。しかし、養分の循環量が十分増え、収量が慣行の倍程度になる頃には成育差は僅少になる。

高畝・不耕起・雑草マルチ・雑草混植は、自然農法の典型的(古典的?)技法です。雑草マルチで表面に養分を集中し、乾燥を防ぎ水分を確保、根を表面に集めるわけです。生きた雑草で防風・倒伏防止、虫の目を眩ますこともできます。
最大の長所は、上根のため汚染度の高い下層部をあまり使わず、特に転換初期に大変有効です。そして、多少時間がかかりますが着実に土を良くするのと、スコップ一本で資材や機械が無くてもできる点です。また、見た目も自然に近く、一つひとつは原理的にも理に適っています。

容易に浄化できる表層部で作物を育てながら、同時に下層部を浄化するわけですから、慣行的な肥効作用のある資材の投入や、肥効作用が起きる使い方をして、表層部を汚染することだけは、絶対に慎まなければなりません。実質は施肥栽培になり、慣行農法と同様な各種障害が起きます。
でも、所詮は逃げ。積極的な自然の仕組みの応用とは言い難く、プロには屈辱的と言わざるを得ません。プロは人に食わせて(生かして)何ぼの商売、スコップ一本で自己満足というわけにはいきません。

転換初期は表層の水捌けや通気性などにも留意する必要があります。でも、団粒化が進めば畝立てが必要とは限りません。作業性や作物に合わせた畝立てをすればよいのです。慣行法は施肥の都合にも合わせた畝立てが行われています。本当に必要なのか、慣行法で良いのか見極めることです。
種類

養分要求度の低いものから始め、次第に要求度の高いものへ。全体の清浄度が低くても何とか育つものから、高い清浄度を要求される物へと進みます。先ずは雑草を育ててみましょう。雑草が育つようなら何でも育つようになります^-^。ただ、清浄度と肥沃度により育つ野菜の種類が決まるため、一般的な有機農法や自然農法とはかなり様子が違います。

先ず最初に、ハクサイができるようになります。写真は転換後2年目のハクサイ、虫食い無し、葉色も濃すぎず薄すぎず(窒素の過不足)、大きさも十分で施肥栽培と比べても遜色なし。植物は、芽と根が出て、葉が茂り、花が咲き、根や茎が太り、実が実り、種子ができます。作りやすい順序は当然、茎葉類、花野菜類、根茎類、果菜類、種実類となります。これが当たり前の自然の順序です。もし、この順序通りでない場合は、どこかが反自然と思って間違いありません。

清浄でも微生物相が極度に貧弱で肥沃度が低く、ワラビやチガヤなどしか生えないような土地は、雑草などで少し肥沃度(養分供給力)を上げるだけで、サツマイモや豆類、イネができます。これらは窒素固定菌と共生関係が強いためです。肥沃度を上げるのは、汚染度を下げるより容易です。

多様な雑草の生える中程度の肥沃度なら、清浄度を上げさえすれば、葉菜、根菜、イモ類はほとんど出来ます。雑草並みのケールからハクサイ(汚染に弱い)などでも、簡単に育つようになります。
大根は少し高目の肥沃度(比較的汚染に強く、低養分に弱い)。カブは更に高い肥沃度・清浄度が要求されます。ニンジンは殆ど雑草^-^。

有機(堆肥)農法や自然猿真似農法ではハクサイ(葉菜類)ができたら一人前と言われます。堆肥はC/N比が低いうえに肥効があり、炭素の相対的不足だけでなく、汚染源にもなっているからです。
また、消極的な自然猿真似農法では、炭素資材を有効活用していません。炭素の絶対的不足から、清浄度、肥沃度とも上がらず、痩せ地でも育つ物(在来種、種子の自家採取)や、葉が傷んでもよいものしか作れないのです。
何れも、二大要因(清浄度、肥沃度)と、それを上げる仕組みを知らず、育たないと思い込んでいるだけのこと。有効炭素量を増やせば清浄度と肥沃度は同時に上がります。

高度汚染地(施肥栽培圃場)を転換した場合は、最初から栽培期間の短い葉物の方が、豆類や根菜類より良くできます。豆類には肥沃度が高過ぎ。根菜類には清浄度が足りないためです。果菜類は収穫期間が長く、より清浄且つ肥沃でなければなりません。実ができても虫(幼虫)が入っていたのでは虫の餌です。

レタスの連作などは栽培期間が短く、栽培適期も長いため、回数を稼げ転換初期に向いた作物です。しかし通常、多種類を栽培しなければならず、屈辱的ではあっても自然農法の古典技?(上根重点の栽培)が参考になります。

でも、虫(害)の方が、菌(害)より簡単になくなります。虫の方が高等生物、繁殖条件が限られる?からのようです。一方、菌害は作物の活力(活きの良さ=健康度)が落ちると出やすくなります。
虫の方が高等生物
先ず、アオムシやヨトウ虫(蝶や蛾の幼虫)など比較的大型の虫がいなくなる。次に飛来する甲虫類が来なくなり(虫食い痕だけで虫がいない)、ダニなど進化度が低い?虫だけになる。ダニなどが減る頃には菌類(カビ病)も減り、最後まで残るのがバクテリアやウィルス病などである。

そこで、土の浄化の進展具合や養分供給度(循環量)を知る必要があります。作物や土壌の硝酸濃度を調べる以外にも、土の状態を知る目安になり、転換初期でも栽培容易な、指標作物と呼べるものを育ててみます。
指標作物:
ハクサイ: 最も虫が付きやすく、根が深くまで入るため土壌中(深部まで)の無機態窒素(硝酸態)の減少具合を知ることができる。これに虫が付かなくなれば、ほぼ浄化が終わったと考えて良い。
サツマイモ: 汚染地でもそれなりに育つが、痩せ地でも育つ吸肥力が災いし硝酸、腐敗成分、堆肥成分(畜糞臭)などの不味い成分、悪臭成分を吸収・蓄積し、味や臭いが極端に悪くなる。逆にみれば、土の良い香りを満喫するには最適の作物。
ニンジン: サツマイモと同様に清浄度を正確に反映する。養分不足が重なれば野生化(芯が太くなり、スジ、アクがある)。
ダイコン: 肥沃度を知るのに適している。比較的汚染に強いが、養分不足に弱い。養分不足では成長が遅く、すが入ったり、硬くなり煮えが悪くなる。センチュウにより肌(根の表皮)が荒れる。
トウモロコシ: 養分量に敏感で量に比例し草丈が決まる。スイートコーンの実の食害程度で汚染度が分かる。重度汚染なら種実まで食べる。軽~中程度では毛(雌しべ)だけ食べる、汚染がなくなれば全く食べない。

大量施肥のために高度に汚染された土でも、無機態肥効成分を有機化(生物化)することで浄化できます。しかし、もっと厄介な汚染があります。特にプロ(農業者、農学者、農業技師など)に見られる、頭の高度汚染です(笑)。頭のリセットは、土のリセットより、はるかに難しいのです。

ただ、意外なことに肥料、農薬を使いまくったプロの方が一旦気付けば、あっという間に見事な作物を作ります。逆に有機・自然農法(猿真似)経験者は、必ずと言ってよいほど、もたつきます(知識障害?)。

味を犠牲にした改良種や、殺し目的の遺伝子組み換え種子は論外。在来種の保存は種の多様性からも大切です。でも、栽培だけを考えるなら、在来種にそれほどこだわる必要はありません。
確かに在来種は低肥沃度に適応できます。しかし、市販の改良された種子でも問題なく育ちます。実は改良種でも無施肥の方が生育に適していて、無防除で育つのがその証拠です。

「改良種は化学肥料と農薬を使うように改良されているから自然農法では育たない」というのは間違い。正確には「改良種は養分吸収力(吸肥力)が弱いため、肥沃な土地でなければ育たない」です。
施肥を前提にしているため、養分吸収力は殆ど考慮されず、他の形質を優先した改良がなされています。そのため、高目の肥沃度を必要とし、ある意味、施肥で汚染された土でも、それなりに育つ改良種の方が強い面があります。

慣行栽培では、肥料を使うしか肥沃度を上げる方法を知らないため、農薬が必要になるのであって、農薬を使わなければならないように改良されてはいません。また、自然猿真似農法では、肥沃度を上げることを知らないから育てられないだけのこと「・・・だから育たない」は言い訳。種子のせいにするのは責任転嫁です。

高度に改良されている場合は例外ですが、一時的な環境ストレス(施肥・防除)に対応するための情報は、種子には殆ど保存されず、発芽時には種本来の性質が発現します。しかし、保存が起きた場合は種子の肥毒と呼ばれ、情報汚染です。
また発芽後、一度でも肥料で育てると比較的短期間で、無施肥では育ち難くなります。特に初期環境が大切で、苗から無施肥で育てなければなりません。
初期環境:
極度の低養分で育苗すると種子によっては一旦、全ての葉が枯れてしまうことがある。だが根まで枯れずに新たな葉を出した苗は無施肥に対する適応力が高まっている。発芽後直ぐ(代謝が盛んな時期)なら、比較的簡単に肥毒を抜くことができると思われる。

生物は環境に適応し進化しました。自然を見ても明らかなように肥沃化すれば、痩せ地に適応した植物から肥沃地に適応した植物へと植生が変化します。普段は常に養分は不足気味、過剰栄養状態は稀だったと考えられます。

そのため不足には適応していても、過剰栄養に対する適応力は殆どありません。容易にメタボリック・シンドロームになってしまうのです。そして肥料たっぷりで、一旦付いた怠け癖(情報汚染)は、なかなかなくなりません。

体組織で繁殖させる、挿し木や株分け、種イモ、イチゴ苗などは、生命情報を一旦、種子という形に収斂し、無駄なものを捨て去ることができません。そのため「情報の浄化」に、それ相応の期間がかかります。無施肥・無防除で種苗の自家採取を三代ほど繰り返す必要があります。
怠け癖(情報汚染):
特にバナナは深刻である。栽培種は不妊性で地下の塊茎からでる吸芽(脇芽)でしか繁殖できない。20世紀半ばまで広く栽培されていたグロスミッチェル種はフザリウム(パナマ病:カビ病の一種)によりほぼ壊滅した。フザリウム耐性があると言われ現在、世界の全生産量の半分を占めるキャベンディッシュ種も、同病(変異体)により同様の危機にある(10年以内に全滅?との予測)。
ブラジルのバナナ王の話では、25年前植えたものは未だに同病は皆無だが新たに森林を切り開き、きれいな土に植えた新しいものほど被害が酷いという。施肥栽培である限り、確実な対処法はないものと考えられる。

果樹のような永年作物の無施肥栽培への移行が難しいのは、この問題のためと思われます。怠け癖がついた成木は見た目は立派でも、性質(体質)自体が弱って不健康な状態です。完全に枯れないまでも、全ての葉が落ち丸裸になる覚悟でやらなければなりません。
しかし、この原理さえ理解すれば健康な苗が作れます。多少時間はかかりますが古くなった樹の更新をかねて転換すれば良いのです。また、直ぐ更新できない成樹園でも土壌改良はできます。急激な土壌改良はせず、ゆっくり肥効成分を抜きながらバイオマスを徐々に増やす木質系資材の表面施用が適しています。
でも、これはツケの分割払い。完済には数年はかかると思わなければなりません。また、体質改善には断食ほど急激でなくても、同じリスクが伴います。リスクの分散はできますがツケは必ず払わされます。

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