高炭素資材の効果的な使用方法 [       転載用] 2010年01月04日 10:30 まーぼう
先日、静岡県掛川市の田舎モンさんの畑を見学してきました。
以下、ざっとですがその時に見たものや感じたことをレポートいたします。・畑について
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見学した畑は今年春から炭素循環農法に転換。
それ以前は3年ほど有機農業。ただし使用した有機肥料に窒素分は少なく、それほど土壌汚染してはいない様子。
土は粘土質。色は黄土色で、山の表層を削ると出てくる芯土のような感じ。
水はけが悪く、これまでは栽培が非常に困難であったとの事。

・高炭素資材について

高炭素資材は廃菌床と剪定チップを使用。
使用方法は廃菌床やチップを2センチほどの厚さに撒き、2~3センチほどの深さに鋤込み。
これは鋤込むというより土と和えるといった感じ。

栽培中も約2ヶ月ごとに剪定チップや廃菌床を土の表面に撒き、作が終わるとレーキで表土を均すのでその時に廃菌床などが土と混ざる。

・炭素循環農法に転換してからの経過

春からの一作目は大きくならなかったり虫食いにあったりとあまり出来が良くなかった。
しかし土の変化はハッキリと感じられ夏からは虫食いもほとんどなく、野菜は健康的にぐんぐん育つ。
そして現在、土は高度に団粒化しており、指先だけで簡単に10センチ以上掘る事が可能。

・現在の野菜の状態

ネギは9月に植えたが成長が早く土寄せが追いつかないほど。
剪定チップや廃菌床を株の周りに重ね撒きして土寄せの代わりとしている。

このネギ、植物体全体にしっかりと養分が行き渡り、葉先の黄化などが見られないし虫食いもない。
一般的に暑い時期は虫によって葉に白い筋が入ったり赤さびが出たりするがそれも全くなし。
慣行栽培では農薬使用を行うがそれでもある程度出てしまう。

大根もぐんぐんと育ちもらい手がなくなるほどの大きさに。
でも固くならずスも入らない。

畑全体ではまだ生育ムラもあり、虫食いになっている野菜も見られるが、これも時間の問題で全体が良くなると思われる。

・高炭素資材の土壌への作用高炭素資材は土の表層極浅く(数センチ)にしか入れていないのに、何十センチも下まで団粒化するという事実。
しかもこれが一年未満で起こり、家庭菜園規模なら小型の管理機すら不要。

おそらく土の表層近くで爆発的に増えたキノコ菌が深い部分にまで菌糸を伸ばすのと、それを追って野菜の根が伸びていく事の相乗作用でこのような現象が起こるのではないかと推察。
微生物と作物の共同作業で土は深いところまでどんどん良くなる。
人間が深い部分へ有機物を入れるという事は考えなくても良い。キノコ菌がやってくれる。

・高炭素資材の有効利用

高炭素資材を土と混ぜる場合、高めの密度でかつ空気が豊富の方が効果があるようだ。
トラクターで鋤込むとどうしても深さが15センチ前後と深めとなり、キノコ菌の餌となる高炭素資材が分散する上に深い部分では酸欠の為に有効利用されていない。
つまり結果的に餌不足となる。

転換初期は特に、田舎モンさんの畑のように高炭素資材は表層極浅く和える程度にし、さらに土の表面をしっかりと高炭素資材で覆う。
こうして通気性を最優先とする。

畝立てを行う場合、あらかじめ畝を立ててから表面に高炭素資材を撒き、軽く鋤込むほうが良いかもしれない。

・感想

田舎モンさんの畑を拝見して激しくショックを受けました。特にネギ。
私もネギを栽培しており、そこそこ出来ていると自負していたのですが、現状まだ養分不足気味で葉色が薄く先端が枯れているものも少なからず見られます。
私の畑も剪定チップを使用しており、量的には十分足りているはずなのですが、トラクター使用のため深く鋤込みすぎて有効に作用せず、結果的にキノコ菌の餌不足状態であるという事が分かりました。
私の畑は剪定チップを無駄遣いしているということが分かった貴重な体験でした。
これからの作業方法、組み立てなおします。

田舎モンさんご本人が畑の経過をレポートされてますので是非ご覧下さい。

「炭素循環農法」実践図書館
[転換1年目の記録]
http://www.tanjunnou.com/CCP023.html

12月24日 まーぼう
頂いてきた大根とネギです。
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ネギは丈が80センチ強、大根は白い部分が50センチくらいあります。
2 2009年12月25日 06:42 まーぼう 高炭素資材については田舎モンさんが
http://tanjunnou.blog65.fc2.com/blog-entry-20.html
の後半でも触れられてます。

特に最後の[補足]では「<空気>は必要で<水>はいらない」という指摘をしておられます。
こちらも是非お読み下さい。
4 2010年01月02日 09:27 まーぼう しんのすけさんも田舎モンさんの畑見学に行かれ、そのレポートを書いて下さいました。
http://yasaiga1ban.hamazo.tv/e2181937.html

3月09日 まーぼう

炭素循環農法HP掲載の「光る野菜」や田舎モンさんのレポートにあるとおり、廃菌床の威力は実証済みです。
しかし廃菌床はどこでも手に入る資材というわけではなく、これがないと炭素循環農法が成り立たないというのでは「どこでも誰にでも持続可能な農業」の実現はおぼつきません。
そこで身近で容易に入手可能な高炭素資材を有効に活用するにはどうしたらよいか、あれこれ考えてみました。

・廃菌床と一般的な高炭素資材の違い

廃菌床とその他の一般的な(生もしくは半生の)高炭素資材の違いはどこにあるかといいますと、高炭素資材にキノコ菌が繁殖しているかどうかにあります。
逆にいいますと、キノコ菌さえうまく繁殖させられれば(菌床化すれば)どんな資材でも廃菌床と同じ効果が得られるということになります。

・高炭素資材の有効活用のポイント

高炭素資材が作物にとっての養分になるまでの流れをおおざっぱに言いますと、[生の高炭素資材→菌床→養分]となりますが、廃菌床の場合はすでに菌床化していますのでこの流れの途中からスタートとなり、すぐに養分化が始まるためにそれだけ早く効果が現れることになります。

このことから、高炭素資材の有効活用のポイントはいかに効率よく資材を菌床化させるかという点にあるようです。

・高炭素資材を菌床化させるには

高炭素資材の菌床化は資材(有機物)をキノコ菌にとって快適な環境の下に置くことで実現できます。

キノコ菌にとって快適な環境とは
1.エサと水分と空気が十分にある
2.生育を阻害する物質がない
3.直射日光が当たらない
という条件が挙げられます。

補足として、1.の水分と空気についてですが、どちらも豊富に必要なようです。
2.については生きた植物体(特に針葉樹)に含まれる樹脂・テルペン類・フェノール類、廃材などに含まれる接着剤や塗料、防腐剤などの農薬、肥料由来のアンモニアや硫化水素(無機肥料のほかに有機肥料が腐敗することでももたらされる)があります。

この環境は自然林では落ち葉が堆積した場所の土とふれあっている部分で「はんぺん」として目にすることができますが、これをどう畑に応用するかという部分が我々人間の知恵の出しどころではないでしょうか。

僕はこれを剪定チップを使って試しているのですが、生のチップを積み1週間から10日ほど自然発酵させ、後に畑に1~2センチ程度の厚さに撒き、深さ10センチ以内に鋤込むことで良いように感じています。

つまり、地上での堆積期間ではアク抜き(生育阻害物質の除去)のみをして、菌床化は土の中で行うというやり方です。
これの場合、剪定チップが菌床化して養分放出を始めるまで少し時間がかかるかもしれませんが、定期的に剪定チップを土に入れていくことでチップの菌床化が連続的に行われ、養分供給も滞りなく行われるのではないかと考えています。

おそらくのこやり方で、生の高炭素資材でも廃菌床に劣らない効果を得られるのではないかと考えられます。
そしてこのやり方がうまくいくか、今年の後半にはある程度見えてくると思いますので、また報告させていただきます。

また、「もっといいやり方があるよ」という方、是非是非コメントをお願いいたします。

3月10日 田舎モン

「まーぼう」さんの、剪定チップだけの、やせ我慢農法に、拍手を送ります。
なぜなら、これからの「たんじゅん農法」の広がりは、この技術だとするからです。
そのわけを、転換一年をちょうど迎えている体験から、レポートします。

この農法の実践上の一番の壁は、頭の転換。これはこれでもか、これでもかと、見てきました。(^-^)
もうひとつだけ、大きな壁があります。他にはないと言っていいでしょう。
もう一つの実践上の壁。それは、十分な炭素資材の連続的な取得です。
始めやり始めた時の感じ以上に、炭素資材がたくさん要ります。

十分な糸状菌と高炭素資材、それで、土壌を発酵化し、発酵型の作物を栽培するのが、この農法のポイントで、その点では、確かに廃菌床がうってつけです。
しかし、キノコの栽培の量と場所が限られているのですから、所詮、この農法が広まれば、みんなが、廃菌床だのみは、息詰まるのは、当たり前です。

実際、この静岡、遠州では、廃菌床の排出元としては、全国最大級のもの、ホクトがあり、これは恵まれているとしていました。
ところが、それを、家畜屋さんが、糞の処理に廃菌床を、定期的大量に使っていて、そのあまりモノが、まわされてくる状態です。

あちこちに、「たんじゅん農法」の実践者が、この一年で、このあたりも出てきて、なかには、浜松の健康惣菜屋さんのように、40店舗の野菜を、この農法でと言い出して、7ヘクタールの畑のうち、3ヘクタールをまず、発酵型に変えようとしています。うれしいやら、いやー、菌床が手に入りにくくなるなと、ジレンマが少しあります。(^-^)

しかし、その廃菌床の会社が、新参ものは受け入れない、大口の契約者は定期的に運ぶが、少量(4トンでも!)注文者は、2カ月待ち。いつくるか、わからない。という状態。そんな状態で、この恵まれたところでも、廃菌床を使った、この農法の実践者には、先行きの見通しどころか、この春の微生物のエサはどうなるだろうと、その廃菌床に頼っていると、なります。

そこで、どうするかとなると、炭素資材の安定的に供給可能な道を開いていくしか、ありません。その頼りになるのは、剪定チップではないでしょうか。

ここのはたけでも、廃菌床の投入以外は、高炭素資材としては、剪定チップを使っています。それも、一時破砕のものを。
全国を回っても、剪定チップなら、何とか、手に入るか、これから、手に入るようにできる、もっとも頼れるものです。

一年間、やってみて、畝も通路も、糸状菌で満ちています。その状態であれば、今後は、廃菌床を投入しなくても、畝には剪定チップ、(通路には、剪定枝資材を)手を抜かずに、連続的に入れていけば、糸状菌は満足しています。

廃菌床なしで、剪定チップを投入したところでも、土壌中で発酵させていくことはできる。ただ、最初だけは、廃菌床に手に入れ、それを撒けば、発酵化が早いというのが、この一年の。この地の畑の様子から言えます。

廃菌床が手に入らなければ、最初から剪定チップだけで、それを発酵型にする手立てをすれば、あとは、どんどん、剪定チップをいれていくだけでいい。
そんな感じがします。

「まーぼう」さんの実践は、非常にその成果が期待されます。

この遠州の畑でも、チップだけの投入を、2年目として試行していきます。

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