ご存知の方もいらっしゃると思いますが。

 

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エルトンメイヨーが行った4つのテスト-ホーソン実験

投稿日:2016年1月25日 更新日:2017年4月18日

 

テイラーの生産性の最大化とメイヨーの人間的経営!あなたはどっちに投票する?の記事の続きです。

テイラーとフォードについてばかり書いていたら、10000文字オーバーしてしまいました。

別記事に移しました。SEO的な都合もありますね。

ここでは、ホーソン実験の経緯から実験の内容、結果はどうだったか?のみではなくホーソン実験の限界点など必要なことはすべてお伝えしていきます。

経営学部の学生さんはレポートやテストに活用してください。

 

はじめ

もくじ [隠す]

1.ホーソン実験とは?

ホーソン実験の概要

  • 場所:ウェスタンエリクトリック社のホーソン工場
  • 期間:1924年~1932年の間に行われた
  • 目的:作業環境と生産性を測るため行われた実験
  • 実施者:エルトンメイヨーとフリッツ・レスリーバーガー

ホーソン工場で行われたらホーソン実験なんですね。一部では、ホーソン研究と呼ばれています。

名前の由来
メイヨーとしては、メイヨー実験にしたかったのかもしれませんが、工場長から「うちの工場で実験することを許可するから、うちの工場の名前で紹介しろ!」と交渉を仕掛けれられたのでしょうか?そこらへんはお調べください。

メイヨーがホーソン実験を行うまでは、大テイラー主義による価値観が産業社会にありました。大テイラー主義とは、人は合理的な存在である、人は基本働くのが嫌いである、人は監視をしていないとサボる、といった人間観によって作られた管理のスタイルです。

1-1 大テイラー主義の前提条件-人間は合理性を追求する

ガチガチの性悪説に基づくものです。

人はもともと楽をしたい。仕事をしたくない。見えていないところでサボる。手を抜く。だから、管理が必要なのだ、と。

テイラーにとっての「管理」とは、法律や条令みたいなもので、ルールがないとみんな好き放題して組織はまとまらない。だから、ルールを作ろう、というシンプルなものです。もちろん、このルールが今日の経営管理に応用されているわけです。

「うわー、いやだなー」と思うかもしれませんが、仕方ありません。実際にそうですから。真剣に働こうが、サボろうが、誰も監視していなければ賃金は同じです。「だったら、サボったほうが無駄なエネルギーを使わないから得じゃない?」というのがテイラー主義です。徹底とした性悪説に基づいて設計されていますね。

もちろん、テイラー主義はヒットしたのですが、ガチガチの管理社会になり、みんな嫌になって仕事を辞めてしまいました。

気付けばテイラー主義は、人をロボットのように扱う人間味のないシステムだと批判されるようになりました。

とどめを刺したのはフォードモーターです。嗚呼チャーリー。

1-2 メイヨーの疑問-人間は合理性だけを追求しないだろ!

1880年に医師の子として生まれたエルトンメイヨー!生まれも育ちもオーストラリア。
アメリカとは季節が逆だったこともあり、アメリカ生まれアメリカ育ちのテイラー主義とは逆の考えを持っていました。

医学!心理学!哲学を極め!42歳でアメリカにわたり、ウォールトン・スクールに乗り込みました。

そのときは、1923年です。アメリカが大恐慌を迎えるちょっと前の物語です。アメリカ国内はフォードモーターが大暴れして、みんなが車をノリわしている時代です。

メイヨーは、フィラデルフィアの紡績工場の調査を社長からジキジキにお願いされました。

社長
「ミュール功績部門の離職率が年250%なんです。
その他の部門は年5~6%なのに。
ぶっちゃけ超困ってます!」

メイヨー
「おいおい!毎月2割がやめていく計算じゃねぇか!
どんだけエグイ労働環境なんだよ?」

社長
「いやー、うちらそんなエグイことしてねぇっす
1920年代のアメリカ産業水準だと、完全にホワイトっす。」

メイヨー
「じゃぁ、なんでみんなやめるんだよ?」

社長
「それがわからないから聴いてんだろ!
こっちは客だ!ゴタクはいらないから調査してこい!
って言ってんだよ。」

このとき、メイヨーははじめてアメリカ人の怖さを知ることになりました。

2 ミュール工場に入ってメイヨーが見たものは?

カオスナまでの労働環境。な・・・なんだこの労働環境は!!!!
アメリカ人の辞書には、「ゆとり」という言葉がないのか?

メイヨーが見たのは、休む間もなく目の前に仕事に没頭する従業員たちです。オーストラリアの大地でサーフィンと研究に明け暮れていたメイヨーにとって、ミュール工場で食事もする間もなく働く工員たちは、クレイジーにすら思えたのでしょう。

仕事・・・というより、これじゃまるで軍隊じゃねえか。

このときのアメリカ人は、日本の戦後のようにメチャクチャ働いて、豊かになりましたが、物理的に豊かな生活をするだけではなく、精神的な豊かさを含めて、全てが欲しかったのです。

GIVE ME EVERYTHING ME-YO

訳:仕事が大変だ!やってられっか! by Pitbull

ヘトヘトになるまで上手馬車のように働いて夜にはっちゃけるだけではなく、仕事中に休憩も必要です。

そこでME-YOの提案です。

離職率が高い原因は、仕事の単純さと孤独からくる精神的疲労。仕事の合間にリラックスできるように休憩でもとらせればいいじゃないですか?オーストラリアにはこんな諺があります。

休むのも仕事のうち!

 Break! time after time before you break your heart!

(繰り返し休め!心を壊す前に!)

と叫んだ、ミュール工場の工場長たちでした。

このときに生まれた曲がこれだったのかもしれませんね。

ただ、どのように休憩をとるかはみんなで考えてね♪と一言残してその場を去りました。

・・・・

・・・・・・・

・・・・・・・・・・・

そのとき、バラバラだった工場のスタッフはひとりつになり、みんなでどれくらい休憩をとるかについて議論を繰り返しました。

結果・・・・

従業員たち

1日4階10分ずつの休憩を交代でとります!
誰がいつ休憩をとるかはみんなで決めますね。

数カ月後の結果・・・

離職率は、250%→5%へと劇的ダウン!

おまけに、生産性もUP

メイヨー・・・・

「マ・・・マジッすか!?」

「いいや、休憩を与えただけで、
ここまで大きな変化があるとは?

別の要因があるはずだ!」

こうして、メイヨーは真実を探求しに旅に出て、ハーバード大学の研究員になり、職権をフル活用して、ホーソン工場で次々と実験をはじめました。

 

ここからメイヨー伝説のスタートです

 

3 ホーソン実験の目的

とりあえず、「人間関係」と「個人の感情」がどれだけ業務能率性にリンクしているのかを調べるために以下4つの実験を行いました。

ホーソン実験の中身

  • 証明実験
  • 組立リレー
  • 面接実験
  • バンク配線作業実験

それぞれについて説明していきますね。

証明実験

何人かの労働者に工場労働をさせて、工場内の照明を明るくしたり暗くしたりしました。物理的な作業の変化が作業効率にどのくらい影響を与えるかを調べたかったからです。

■仮説:部屋の照明と作業能率に影響を与える

  • 工場内の照明を明るくすれば作業能率が高くなる
  • 逆に照明を暗くすれば、作業能率は低くなる

ところが、結果は予想外でした。

■結果:作業条件と能率には相関関係はなし

  • 工場内の照明を明るくした場合には、それまでよりも作業効率が高くなった
  • その後、反対に照明を暗くした場合でも従来よりも作業効率が高くなった

確かに工場内の証明を明るくしたときは作業能率は高くなったのですが、照明を暗くしても作業能率は低くなることはありません。逆に、作業能率はドンドンとあがっていきました

物理環境と生産は関係がないことが判明しました。

照明の明るさと作業能率は全く関係がない、が判明しました。

ホーソン実験の第二弾「組み立てリレー」です。ホーソン実験では最も有名な実験かもしれませんね。

組み立てリレー

大勢の従業員の中から6名の女性従業員を明るい光で照明で照らしました。「キミたちは選ばれたんだ!エリートなのだ!優秀なんだ!愛している!」とメチャクチャ褒めまくりました。とにかく、愉悦感をくすぐります。

そして、翌日、この6人に継電器の組み立てリレーをさせます。そこで、労働条件を色々といじるわけです。

  • 部屋の温度・湿度を上げたり下げたりする
  • 休憩を与えたり与えなかったり不定期にする
  • 軽食を与えたり、与えなかったり
  • 賃金を上げたり下げたりする

嫌がらせを受けているようにしか思えませんよね?

物理的な労働条件を悪くすることで労働者の生産性が落ちるのでは?が当初の仮説だったのですが、これも外れました。

部屋を明るくしようと暗くしようと、暑かろうが寒かろうが、休憩が多かろうが少なかろうが、給料をあげられようが下げられようが、生産性は一定のペースを保っていました。

どんなに労働条件を変更しても、彼女たちは生産性を落とすことなく、逆にお互いを褒め合い、励まし合い、過酷な労働環境を乗り越えたのです。

結果、6人の仕事の能率は、グングンと高くなっていったのです。

とりあえず、士気の高いチームを作ることに成功すれば作業環境の変化には全く影響されない、まで立証させることができました。

労働条件や作業環境に関係なく、彼女たちは自分たちが期待されている認識が作業の能率性に大きく寄与したものと考えられます。

面接実験

ここら辺で調子に乗ったメイヨーさん、今度は個人の感情が仕事にどう影響を与えるのか、について調べるため面接実験を始めました。

21126人の従業員に対して、「仕事は楽しいかね?」「この仕事を通して何をやりたいかね?」「あなたはこの仕事についてどう思うかかね?」と質問攻めにしました。

面接というよりは、お仕事についての楽しいお話ですかね。「何か不満があったら教えてくれ!」「キミには仕事を通してハッピーになってもらいたいのだけれどどうしたらいいかな?」みたいな労働者が喜ぶような話題を振っていました。

労働者達の労働意欲は、就業環境や物理的な賃金よりも、職場の人間関係や仕事に対する適正、興味、納得といった感情的な部分と切り離すことができないことが判明しました。

ここら辺からテイラー達が主張する客観的な労働条件よりも主観的な感情の方が生産性に直結すると考えられるようになりました。

バンク配線作業実験

ここら辺で一気に調子に乗るメイヨーさん。

最後に行ったのが電子交換機気の端子の配線作業実験です。従業員を職種ごとにグループ分けさせて、配線作業を共同で行わせて成果を調べたところ、以下2つのことが判明しました。

  • 労働者は全ての力を出し切るのではなくどこかで手抜きをしている
  • 時間あたりの生産性(能率)は、能力よりも意識によるところが大きい
  • 上司と良好な人間関係を気付けている方がミスが少ない

ということが解りました。カンタンに言うと、職場の人間関係が悪いと人は怠ける!ということです。それだけです。

ホーソン実験で学んだこと

生産性の向上は、工場の設備や労働環境、物理的な働きやすさではなく、上司と部下の関係や同僚との人間関係に起因する部分の方が大きく影響する、ということでした。

特に興味深かったのは下記の部分でしょう。

ホーソン実験は、メイヨーと愉快な仲間たちが労働者に対してヒアリングや面談を通して行われました。ところが、ヒアリングや面談では有益な情報は一切得られませんでした。グチや文句を聴いていただけですからね。

ところが、このグチや文句を聴くだけの好意に意味があったのです。労働者たちは、話をすることでストレスを和らげ、心身ともにリフレッシュされました。生産性の向上につながった、とメイヨー先生がどこかの本で仰っていました。

まさに、現代のカウンセリング的なアプローチとも言えるでしょう。

 

ホーソン実験にはフリッツ・レスリーバーガーという人も研究のお手伝いをしましたが、この人はあまり知られていません。

残念ですね。

おまけ、

ホーソン実験

一世紀近い昔の実験でありながら今も注目を浴びるホーソン実験。「生産性向上」という永遠の命題を抱える企業にとって、従業員の心理が企業の生産性に影響するというこの実験は、現代においても関心の高い研究結果です。ホーソン実験の具体的な内容と生産性と人間関係についてご紹介します。

目次[表示]

「ホーソン実験」とは?

ホーソン実験とは、アメリカのシカゴ郊外にあるウェスタン・エレクトリック社のホーソン工場で行われ、「職場の物理的な環境条件ではなく、人間関係が生産性に影響する」ということを突き止めた有名な実験です。

ホーソン実験は1924年から1932年に行われ、当初はウェスタン・エレクトリック(Western Electric))社と「全米学術協会」の「全国調査会議」が調査を行い、途中からハーバード大学のエルトン・メイヨー、フリッツ・レスリスバーガーらが研究に加わることで、実施機関がハーバード大学になっています。

1920年代と言えば、アメリカは「狂乱の20年代」(the Roaring 20s) 。第一次世界大戦が終わり、戦欧州各国が疲弊する中、アメリカはだけは軍事市場に代わって個人市場が一気に拡大し、未曾有の好景気に沸きました。人々は、大量の物資を消費し、新しい音楽であるジャズが流行り、国中がお祭り騒ぎのように賑わった時代です。

この時代の経営管理論は、フレデリック・テイラーが提唱した科学的管理法(テイラー・システム)が主流でした。

科学的管理法とは、工場の従業員を効率的に管理する方法で、1日の作業量を設定し、作業手順を決め、作業の標準化を図ることで、どのような人材であっても課業(一定時間内に標準作業量をこなすこと)が達成できるようにするシステムです。科学的管理法の応用として大量生産方式を確立し、実戦に成功したのがフォード・システムです。

そのような時代、ウェスタン・エレクトリック社は、アメリカン・テレホン・アンド・テレグラフ社(The American Telephone & Telegraph Company)、 現代のアメリカ最大手の電話会社「AT&T」の子会社で、電気機器の開発と製造を行なっていました。子会社といっても、当時、従業員2万9000人を抱える大手企業で、科学的管理法やフォード・システムによって生産性の向上を図っていました。しかし、好景気を背景に親会社からの発注など大量の注文をさばく必要性が生じ、作業能率・生産能率を上げるためにも科学的管理法の実証を行う必要がありました。

このよう事情を背景として、生産性向上のための条件を模索するために行われたのが「ホーソン実験」で、ウェスタン・エレクトリック社のホーソン工場で行われたことからこの名がつけられました。

実験は事前の予測とは異なり、いくつかの実験を重ねていくうちに、人間関係が生産性に影響するなど、生産性の向上には「人間的側面が重要である」ことが明らかになりました。そして、この発見はその後のアメリカや戦後の日本社会に大きな影響を与えることになります。

【関連】科学的管理法とは?わかりやすく解説 / BizHint HR
【参考】同志社大学:「ホーソン実験」と人間関係論 / 島, 弘

ホーソン実験で行われた4つの実験

ホーソン実験は、最初から生産性と人間関係を結びつけたものではありません。まず最初に環境要因と生産性について調査するため、「照明実験」を行いました。その結果から次の実験として「リレー組み立て実験」「面接実験」「バンク配線作業実験」と、全部で4つの実験を行なっています。ホーソン実験がどのよう経緯を経て結論にたどり着いたのか、各実験についてご紹介します。

照明実験

先に述べた通り、工場内の照明と能率の相関関係を調査することが目的の実験です。調査は1924年から開始し、第1期から第3期にわたって行われています。実験前の予想では、工場内の照明を明るくすれば作業能率が上がると推測しており、照明を暗くした場合にコイル巻きの作業速度がどの程度低下するかを計る実験でした。

実験は常に明るい照明で作業を行うグループと、最初は明るいが実験回数を追うごとに照明を暗くしていくグループに分け、結果を比較します。

図表1の通り、照明量を25ワットとかなり暗くしても100ワットの明るさのグループより生産速度が高いなど、照明が明るい・暗いといった作業環境と作業能率がリンクしないという結果となりました。この実験の結果は予想外であり、解釈に悩む結果でした。

図表1 照明の明るさとコイル巻きの速度

【出典】独立行政法人 産業技術総合研究所:デジタルヒューマン研究センター 中田亨「ホーソン効果」

リレー組み立て実験(継電器組立作業実験)

物理的な条件によって生産性が左右されるとの仮説が否定されたことで、メイヨーやレスリスバーガーを招聘し、この実験からハーバード大学を中心にさらなる実験、本格的なホーソン実験が始まりました。

次の実験として、1927年4月から1929年6月までの期間に継電器組立作業実験を実施しています。組立作業として5人、部品を揃えて渡す世話役として1人と計6人の女性従業員でグループを組みます。さらに、監督(実験では人事部の観察者が人事業務と監督役を兼ねた)を1人配置し、賃金・休憩時間・部屋の温度などの労働条件を変えながら継電器(リレー)の組み立てを行い、その生産性から作業能率を計測しました。

今回の実験では、賃金や休憩といった労働条件が改善されるとともに作業能率が向上したものの、元の条件に戻しても作業能率が上昇したため、またしても労働条件と作業能率向上の関係性は見いだせませんでした。

科学的管理法の説は実証されず、否定されることとなりましたが、作業能率の向上について、メイヨー達は実験特有の事情が背景にあり、以下のことが心理的に影響したため高い生産性が維持できたのではないかと分析しました。

  • 女性従業員は特別に選ばれたことを誇っていた。
  • 共通の友人がいたため、仲間意識が強かった。
  • 実験の目的を最初から知っていた。
  • 国内トップ大学であるハーバード大学で行っている実験である。

図表2 休憩の量と作業速度

【出典】独立行政法人 産業技術総合研究所:デジタルヒューマン研究センター 中田亨「ホーソン効果」

面接実験(面接計画)

継電器組立作業実験結果を踏まえ、メイヨーはさらなる状況理解のために、今度は従業員にインタビューすることにしました。1928年9月から1930年3月までの期間に、工場全体の8部門の従業員21,126人に面接を実施しています。最初は質問形式の面接でしたが、役に立たないと判断し、途中から従業員には自由に意見を話してもらう形式にしました。

この実験では、従業員の行動と感情は切り離すことができないことや、職場環境による影響は少ないが、労働意欲は職場の人間関係に影響されることなどが確認できましたが、感情の認識を研究することは難しいとしています。

バンク配線作業実験(バンク捲線作業観察)

最後に、1931年11月から1932年5月までバンク配線作業実験を行なっています。「配線工」「ハンダ付け工」「検査工」と関わりが深い3つのグループに分けて電話交換機の端子(バンク)の配線作業を行い、その様子を観察する実験です。

今までの実験結果を元に、「小さな集団が存在し、社会統制機能を果たしている」という仮説をたて、その検証を行いました。また利害関係のない傍観者が、従業員同士の人間関係が、それが作業にどのような影響を与えているかということも観察ポイントとてします。

この実験の結果、仮説通りインフォーマル組織(非公式組織)の存在を発見しました。実験の中で、個々の自由な友好関係により、自然発生的な組織(インフォーマル組織)が出来上がり、さらに、そのグループごとに以下のような様子が確認できました。

  • インフォーマル組織には独自の行動規範が見られる
    グループ内に合わせていることで個々の生産が制限されている。
  • インフォーマル組織は、対内的、対外的な機能を有している
    グループ内に対しては社会的統制の機能を果たし、グループ外に対しては防衛メカニズムとして機能している。
  • インフォーマル組織ごとに1日の標準作業を設定
  • 監督者に対しては防衛・共存していた
  • 個人的な関係性が品質に反映
    品質記録から、検査官と従業員の個人的な人間関係が品質に反映されていた。また、観察者がグループに対しての関心の高さや、態度などによっても生産性に影響があった。

このように、社会的規範、品質、作業効率、生産性、は人間の感情によって成り立つインフォーマル組織によってコントロールされていることが明らかになりました。

ホーソン実験の注目すべき結果

ホーソン実験によって、いくつもの様子が確認できましたが、注目すべきことはそれまで軽視されていた人間の感情部分が仕事に影響するということです。

当初想定した「物理的労働環境やインセンティブ(報酬)」などは生産性にはあまり影響しませんでした。その代わり、「周囲から注目を浴びていることでモチベーションをアップし、不利な労働環境でも作業能率を上げる」「インフォーマル組織が発生しグループ内を統制している」ことなどが判明しました。経済的成果や合理的理由よりも、社会的成果や感情的理由に左右され、フォーマル組織よりインフォーマル組織に影響されるのです。

人間を部品のように扱っている非人間的な管理方法から、科学的なアプローチで人間の感情に配慮することが重要であることを明らかにしたことは大きな発見でした。

図表3 科学的管理法と人間関係論

【出典】IHARAHISAMITSU’s web site:『テキスト経営学(第3版)』の中国語翻訳 第9章 メイヨーと人間関係論 (梅奥和人关系

ホーソン実験により注目される人間関係論

この実験結果から人間的要素が重要であることが判明したことで、メイヨーやレスリーによって人間関係論が提唱されました。「業績を上げるには、生産性を上げる。生産性を上げるには、従業員の士気(モラール)を高める。士気を高めるには、職場における人間関係の改善が必要である。」という図式が成り立ったことで、この実験以降、経営学における考え方が大きく変わることとなり、人間関係論が盛んに研究されていきます。

そして、後年「マズローの欲求階層理論」「マクレガーによるX理論・Y理論」「ハーズバーグの動機づけ衛生理論」などにつながっていきました。

人間関係論が発見され、広まるには社会的背景による影響もあります。先に述べた通り、ホーソン実験を開始した時期は、第一次世界大戦の終結、個人市場の拡大、テイラーの科学的管理法 とフォード・システムによる大量生産と管理によってかつてないほどアメリカ中が好景気に沸き、しかも大手通信機器メーカーでの実験となれば被験者の生活水準は、第一次世界大戦前の一般的な生活水準と大きな違いがあります。

マズローの欲求5段階説を参考に言えば、生活水準が上がったことで、生理的欲求や安全欲求がある程度満たされ、社会的欲求や尊厳欲求を求めるようになりました。そのため、人々は科学的管理法で考えられていた経済的理由だけでは働かなくなり、より上の段階の欲求を求めだしたと考えられます。

現代の日本企業では、ブラザー・シスター制度のように、個々のメンタルまでサポートするものや、フリーアドレス制やSNSの活用といった社内コミュニケーションの活性化など、グループ内(社内)の心理的安全性を育み高めるような人間的経営を行なっています。このように、ホーソン実験から始まった人間関係論は、今の経営者にも影響を与えています。

図表4 マズローの欲求5段階説

【出典】モチベーションアップの法則:マズローの欲求5段階説
【参考】IHARAHISAMITSU’s web site:『テキスト経営学(第3版)』の中国語翻訳 第9章 メイヨーと人間関係論 (梅奥和人关系

まとめ

  • ホーソン実験とは、ホーソン工場で行われた「職場の物理的な環境ではなく、人間関係が生産性に影響する」ということを突き止めた実験。
  • 実験は「照明実験」「リレー組み立て実験」「面接実験」「バンク配線作業実験」と全部で4つ行なった。
  • 実験によって、職場の人間関係が順調であれば生産性が向上するという、人間の感情部分が仕事に影響することが判明した。
  • 人々は、生活水準が上がったことで経済的理由だけでは働かなくなった。

 

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