参考資料1
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「たんじゅん農法」非常識な常識
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― 自然の側から観る「自然農法」 ―
Ⅰ 自然農法の基本
1) 自然の側から観たものが「自然農法」
「炭素循環農法」(「たんじゅん農法」と略称)は、科学的な意味での「自然農法」。人間の側(天動説)からでない、自然の側から(地動説)の農法をいう。
一般的に言われている<自然農法>は、人間の側からの見方・考えが入っているので、いろいろ提唱した人間の名の数だけある。
しかし、本来「自然農法」は、向こう(大元)からだから、一つしかない。それは、科学であり、「単純、明快、矛盾なし」。
2) 不自然であってもいい、反自然であってはならない
自然とは、すべてが生き生きと活かされてある状態。作物の成育が悪いとか、虫の着くのを人間が我慢するとか、それは反自然。
一般的な<自然農法>のほとんどは、自然な姿を求め、反自然になっている。
畑は不自然、農機具も不自然。だが、虫も機械も、化学資材さえも、すべてが活かされ、生き生きとしているのが自然。
3) 地球全員が食れる、生産性の高い農業が自然農業。
一部の人しか、食べれない、生産性の低い農業は、自然農業ではない。たくさん取れて、ほどほど儲けて、みんなが豊かに食べられてこそ、自然農業。
自然農業というなら、そんな農業をやっていく覚悟がいる。
農をやる人も、食べる人も、みんなが、生き生きとする農業。
4) 一生懸命や苦労は自然に逆らっている証拠
作物も、土も、微生物も、自然。
人間が、自然に逆らっているぶんだけ、苦労や努力がいる。それは、自然農法ではない。
努力を努力とも思わない、楽で、楽しいのが、当たり前。
5) 菌類と細菌がバランスして、健康な植物が育つ
自然の環境では、菌類(糸状菌などカビの仲間)と細菌(バクテリアなど)、植物が共生している。
植物が作って死んだ有機体、落ち葉や枝は、2段階で分解される。
第1段階: 菌類の働き(主に発酵型)
有機体に含まれる巨大分子のセルロースやリグニンを、中間段 階まで分解し、一時保管するのが、菌類の働き。
第2段階: 細菌の働き(主に腐敗型)
第1段階まで分解されたものを、細菌が徐々に食べて、完全に 分解し、植物の根が吸収できるまでにする。
菌類(糸状菌)と細菌(バクテリア)がいて、植物が育つ。
ふつうの畑には、細菌はたくさんいるが、菌類はわずか。そこに、細菌が食べやすい、堆肥などの有機肥料を与えると、急激に細菌がそれを分解するので、作物は過剰な肥料に一度に囲まれ、腐敗や施肥障害を起こし、不健康な作物になり、持続しない。
一方、菌類と細菌のバランスが取れている山のような環境では、有機体をたくさん与えても、多様な微生物相によって、徐々に分解され、むしろたくさん与えるほど、発酵型の細菌が増え、それに比例して、生命力のある植物が大量に育つ。
また、菌類が働くと、粘液物質を出すので、団粒化が進み、土を柔らかくする。細菌が働くと、土を硬くする。
6)なにがなんでも、微生物を飼う覚悟がいる
「たんじゅん農法」では、作物を育てるのではなく、菌類と、細菌の、2種の微生物を飼うのが農家の一番大事な仕事である。
農家が作物を育てているというのは、人間の思い上がり。微生物が作物を育てている。自然農法では、農家は微生物(菌類と細菌)のドレイ。微生物は毎日生きている。まずは、何をさておいても、微生物に餌を与えて、飼い続けることが大事。それも、腐敗したものでなく、新鮮な餌を与える。
7) 腐敗型の作物は虫の餌。発酵型の作物は人間の食べ物。
虫の腸内は腐敗型なので、発酵のものを好まないので、発酵型の作物には寄りつかない。人間の腸は、発酵型なので、腐敗型の作物は適さない。
虫が寄ってくる作物は虫の餌、人間が食べてはいけない。虫の寄りつかない作物こそ、人間の食べもの。
虫は、人間に適さない作物をみわけて、人間が食べないように、自然に戻す役目をしてくれている。自然農業では、虫は殺さないし、虫を取らない。虫は虫の役割がある。それを活かす。
8)作物の収量と質は比例する
たくさん作物が取れる畑は、それだけ微生物も多い畑。だから、発酵成分が豊富。そのため、作物に多くのうまみ成分が含まれるので、おいしくなる。
たくさん取れない畑の作物は、うまみ成分にかける。貧弱な作物はまずい。
9)作物の収量は、微生物の餌(炭素)に比例する
自然な環境で、生物にとって、一番足らない元素は、炭素。空気中にCO2として、わずか(0.04%)しかない。しかし、生物にとっては、炭素は一番大事なエネルギー源。
山の環境では、炭素(有機体)が畑の数分の一で、作物は十分に育たない。山の環境の数倍の炭素を畑に供給すれば、微生物量が増えて、健康で、おいしい、慣行農法以上の収量の作物が育つ。
Ⅱ 自然農法の技術
1) 畑に、糸状菌とその餌を撒く
畑を山の環境にするには、糸状菌などの菌類を増やすのがポイント。「たんじゅん農法」を早く進めるには、手に入れば、きのこの廃菌床を入れて、菌類を増やす。
廃菌床は、木のチップなどの有機体と糸状菌、ぬかなどの混合物。チップを発酵させたものや、山の木の葉の堆積したものも同じ役割をする。
糸状菌は、40℃以上で弱り、50℃以上になると、死ぬ。廃菌床を山にして積んでおくと、発酵熱で温度が上がり、一日で糸状菌が弱ったり、酸欠で腐敗する。だから、廃菌床を使う場合は、手に入ったら、すぐに、畑に薄く撒く。(それがすぐにできなければ、厚さ20cm以下に広げておく)。
2) 水よりも、まず、酸素が十分届くように
作物が育つには、糸状菌と発酵型の細菌が棲みやすい環境が大事。
糸状菌は、進化のピラミッドの一番下の動物なので、酸素をなによりも必要とする。また、発酵型の細菌も、酸素がいる。
そのため、糸状菌や発酵型の餌は、酸素の豊富な、表面の数cmの土に混ぜると、それらが活躍して、繁殖する。
酸素の次に、水分が大事。水は100%湿度の空気、「水分」でよい。糸状菌などは乾燥すると、活動を休むので、土の表面を有機資材でマルチして、乾燥を防ぎ、発酵環境を保つ。
雨が降ると、地下水位が高くなる畑は、空気の流入が断たれ、発酵型の環境が阻害される。自然農法の微生物を飼うには、畑の排水対策が不可欠。
トマトは、空気をとても必要とするから、雨除けと水はけが大事。畝を高くするとよい。
苗を育てる際も、空気が十分根に届くよう、水は出来るだけ葉がしおれるまでやらないようにし、やるときはたっぷりやる。養分もあまりやらない。上は貧弱でいい。下を育てる。そういう厳しい環境が、根がしっかりした、茎も固い、病気に強い作物になる。
3) 漉き込まないと餌にならぬ。深くてはだめ
有機体(炭素)は、土と酸素に触れないと、微生物の餌にならない。浅く5cmぐらい、土とかき混ぜると、分解が早い。深く耕すと、空気が入らなくて、腐敗になりやすい。
廃菌床は、手に入ったら、すぐに厚さ数cmに畑に広げ、浅く土とかき混ぜるのは、そのため。土と菌床の発酵和え物ができる。
不耕起で、有機体(炭素)を上に乗せるだけでも、数年すれば、微生物相は豊かになり、作物ができるようになる。しかし、それを、数cm土にすき込むことで、早く発酵微生物相を増やすことができる。
4) 用もないのに耕さない。耕すときは微生物の餌を与える
土を耕すと、酸素が土中に供給され、微生物 の働きが活発になり、土の有機質が微生物の餌として食われて少なくなる。耕すときは、微生物の餌を与えたときだけでいい。
餌を与えないで、むやみに耕すと、耕さないところに比べて、かえって、作物の出来が悪くなる。一生懸命やっている畑や田で、実際にそういう現象がみられている。
土を耕すのも微生物の仕事。微生物を飼い続ければ、2mぐらい深くまで耕してくれる。
5) 腐ったものは入れない
肥料・堆肥を入れると、土壌が腐敗になり、腐敗型の作物ができる。ミミズがいるようでは、腐敗物質が土中にある証拠。畑を放置しても、それはなかなか抜けない。
「たんじゅん農法」は、肥料も、堆肥も使わない。自然の原料をそのまま、発酵させず、土に入れ、浅くかき混ぜる。微生物の働きで、土の中の腐敗が浄化され、発酵型の微生物が増え、それらの出すものが、発酵型の作物の養分となる。
微生物の餌は、腐らないものなら、どんな有機体でもいい。生のまま入れる。
チッソが多いと腐敗しやすい。炭素率(C/N比)40前後が腐敗か発酵の目安。入れる量も、腐らなければ、入れすぎはない。雨などで、腐る可能性のあるものはすき込まないで、土に乗せるだけにする。生の草は、少し半乾きにして使う。
炭素率の低い糞や糠を、高炭素率のチップなどと混ぜて、そのまま土にすき込むと、作物に葉が黄色になるとか、病気になるなどの生育障害が出やすい。
糞や糠で、微生物が急激に繁殖し、必要なチッソが足らなくて、土壌からも取り込んで、作物がチッソ不足(チッソ飢餓)になったり、増えた微生物が出す分解物で、根の伸長が阻害(酸欠や腐敗の障害)されるからである。
6) 畑が発酵型に変わると、餌が大量に不足
腐敗が浄化され、発酵型に畑が変わると、微生物が爆発的に増えて、大量に餌不足する。その結果、微生物の一部が死に、腐敗が起きて、作物の生育が止まり、味がまずくなる。
現段階(09年05月)では、ほとんどの実践者の畑が餌不足。 大量に餌を入れれば、おいしくなるし、収量もあがる。
目安は、年に、1ha100トン。1メートル四方に10キロ。 作物の更新時期か、2月に一回。そのたびに、土の上に乗っている有機資材と土5cmぐらいとをかき混ぜてから、その上に、新しい有機資材(炭素)を置く。その上に置いた資材が、次回土とかき混ぜて、微生物の餌になる。
7) 田も、腐敗した水では、おいしい米がたくさん取れない。
田の水は、畑の耕土に相当する。酸素が必要。日本のほとんどの田の水が、腐敗している。しかし、それを考慮していない。日本の米は、腐敗型。まずい。昔の米の味が忘れられ、食感が、おいしさの基準になっている。
田に草がたくさん生えるのは、ほとんどが、腐敗を好む草で腐敗が原因。畑の耕土に相当するのが、田では水。田の水を発酵型にすると、おいしい米がたくさんとれる。草も減る。
田は、腐敗を防げば、何もしないでも、おいしい米が10俵以上取れる。そのポイントは、「秋がスタート」。米を収穫したら、わらは持ち出さないで、すぐ土に帰す。秋にすき込まないで、春、水を入れる前にすき込むと、水が入ったとき、腐敗の原因になる。
わらや籾殻、稲株は、収穫後すぐに、土に浅く1回すきこむ。気候にもよるが、静岡ぐらいなら、1,2月に、寒い所なら、凍る前に、もう一回すきこむ。春には腐敗の材料が残っていないようにするのが大事。逆に、春までに何回もすき込むと、冬でも、微生物は働くので、餌を無駄に微生物に食わせることになり、米の収量が落ちる。
いい米の目安は、分けつや粒数ではない。くず米がどれだけ出るかどうか。米は熱帯の作物だから、根元の温度変化が少ないほうがいい。それには、発酵型の水に変え、できるだけ深水にする。中干しはしない。
8) 畑は休めさせないほどいい
微生物相(バイオマス)が増えると、作物を作っても作らなくても、餌は食われていく。それなら、作物を収穫したら、すぐ、次に日に、次のものを植えたらいい。畑は、必要なものだけいただき、残りのものは土に還す。連作するほど、微生物相が作物に合わせて整うので返っていい。ただ、豆科のものは、根粒菌がチッソを固定するので、チッソ過多になり、連作できない。(イネ科のものやトウモロコシを植えて、チッソを消費させる)。
冬、作物を作らなくても、畑や田では、微生物が働いて、土中の有機体の分解は進む。とくに、糸状菌は、冬でも働くので、冬にも餌が必要。(バクテリアは冬休む)。
9) 草は刈らないと餌にならない
微生物は、死んだり、弱ったものしか、餌にできない。草を生やしたまま放置しても、生きたものは、土の微生物の餌にはならない。作物を収穫後、何も作らないなら、草の種(クローバーなどのチッソの多いものでなく、イネ科のもの)を蒔き、草の炭素量が一番多くなった時(実をつける頃)に刈って、土に浅くすき込むと、微生物のいい餌になる。
Ⅲ 農と食と人間
1)まずさに3種、おいしさに2種
土壌中の成分が作物に吸収されて、食べたときの味になっている。
その味を、「まずさ」と「おいしさ」にわけると、 「まずさ」の成分 ① 農薬 ② 腐敗成分 ③ 硝酸態チッソ
「おいしさ」の成分 ① 糖分 ② 発酵成分
腐敗型の作物は、まずくなり、発酵型の作物は、おいしくなる。
「たんじゅん農法」をやっていると、土壌が浄化されるにつれて、「まずさ」が次第に消えていき、作物のできにバラツキがでてくる。それは土中の腐敗がなくなった証拠。さらに続けると、作物が発酵型に代わり、「おいしさ」が出てくる。
それまでには、慣行農法から転換して、1,2年かかる。
おいしいか、どうかは、一番まずいところをたべてみると、わかりやすい。野菜なら茎、米ならどろどろにして。
2) 野菜と果樹とハーブ
野菜は大量の微生物の養分で育つ。ハーブを野菜畑の中で、同じように育てると、アクも香りも減って、野菜に近づく。ハーブは、だから、畑の端の、養分量の少ないところに植えるほうがいい。逆に、野菜を養分の少ないところで育てると、野性化する。
果樹は、野菜とハーブの中間で、養分も、その中間がいい。
果樹は栽培期間が長いので、野菜などとは少し異なり、急激な変化を嫌う。樹木医の勉強が参考になる。
3) 進化のピラミッドの低いものをたくさん食べる
自然の仕組みは、進化の上位のものは、下位のものを食べて生きるようになっている。
同じレベル、あるいは、上位のものは食べない。
ただし、弱ったり、死んだものは、最下位の微生物が食べて、分解し、自然の循環をする。
人間は、最上位だから、同じレベルの人間以外、すべてのものを食べることができる。
しかし、自然の仕組みから考えて、同じレベルに近い、上位のレベルのもの(哺乳類)は少なく、レベルの遠いもの(菌類、植物など)は多く、中間のレベルのもの(魚など)はほどほどに食べるというのが、自然ではなかろうか。
4) 子どもの食べ物は選んで
苗を育てるのと同じで、子どもの食事は、それで、一生のクセがつく。子どもの時期は大事。選んで与える必要がある。
① 味の濃いものは与えない。味付けで食べて、材料の味がわからない。
② ジャンクフードは与えない。添加物が多い。
③ できれば、手作りのものを与える。
5) 腐敗菌もいて、発酵菌もいて、発酵する
地球も、人間社会も、畑も、人体も、細胞も、すべて、宇宙の縮図。相似形。
多様なものが共に存在して、互いがある。どれをとっても、いらないものはない。
人体の腸のなかも、腐敗菌と発酵菌がいて、なりたっている。
新らしい、汚れていない土地を、「たんじゅん農法」の畑にする場合、多様な微生物が棲んでいないので、豊富な微生物相ができない。そのため、一度、畑を汚さないといけない。
6) 矛盾なし
有機農法では、草が難問。スギナが生えて困っている。ジシバリとか、イネ科の雑草が多くて、草取りが大変。野菜作りはあえて楽しいけど、草対策でくたくたという家庭菜園家は多い。除草剤を撒くにしても、草に悪感情を持ったり、敵対的になったりする。
それは、虫についても同じ。
虫や草に対して、敵意を抱いたり、悪感情で身構えるのは、人間の側からみて、それらが不都合だからである。
しかし、自然の側から観れば、単純・明快・矛盾なしの訳があって、そうなってある。
スギナやイネ科の草は、やせた土地を肥やそうとして生えている。あるいは、カルシウムが不足した土壌なので、それを増やそうと、スギナがカルシウムを供給しているとされている。虫も同じ、調和を取ろうとして、腐敗物を分解するために、来てくれている。
矛盾なしとは、盾ももたず、矛も持たない状態。人間の側から見れば、そうはならないが、自然の側から見れば、草に対し、虫に対し、それが可能になる。
7) 必要なものは必要なだけ、必要なときに用意される
技術、方法、資材は結果ではない。なんでもいい。こだわらない。
始めよかったものでも、それを続ければ、害になるものもある。その逆もある。
薬と毒、同じもの。量が違うだけ。なんでも、精製すると、薬や毒に近づく。
絶対はない。機械も、手抜き技も、自然の側に立って、必要であれば、あらゆるものを生かす。
その地域、その時期にあるものを活かす。結果が大事。方法はなんでもいい。
この農法は部分的には昔からやられていて、りっぱな作物ができている。いままでは、方法や技術はあったけど、原理が分からなかっただけ。
8) 自然の側から、未来側から観る
「たんじゅん農法」は、人間の側から見るのではなく、自然の側から観る農法。天動説から地動説への転換と同じように、いままでの考え方と逆になる。
指導者はいない。新しい人、知らない人が先生。答えが先に出て、問いが後からわかる。
未来側から、後ろ向きに観る。特定の組織は作らない。みんなが繋がっている。
(それについては、ホームページ「心は光」を参照)。
9) 自己の世界を広げ、こだわらないための 実践者の交流
学んだこと、知りえたことを、信じないで、決め付けないで、実践してみる。その過程や結果を、実践している方々と交流を深め、新しい方にも知らせていく。
そのことで、また、あたらしく、深く学べ、実践の糧になる。
これから、実践者の交流が、新しい方を入れながら、ますます大事になる。
09.06.15 版
(田舎モン)
2010-02-27(23:23)
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