農と食の講演・交流会  in奄美 2013.3.28 ~4.1

奄美の森は、新緑に包まれて、輝いていた。森が多い分、耕地は少なく、そこに5万人が生活しているとは、正直大変だろうと察した。
以前は、大島紬で栄えたそうだが、それも売れなくなって、サトウキビが特産となったが、それも、台風の被害と、幹に入る虫の害で、ろくに収穫できなくなってきているという。それだけでなく、畑はどれも生気がなく、森の緑と対照的であった。水田も、耕作面積が減っている。
それだけに、たんじゅん農法のこれからの役割は大きく、また、限られた島だから、元気な奄美を取り戻す成果も目に見えやすいのではなかろうかと思った。

その素地は、ある。元気いっぱいの島の林。そして、5時間ぶっ通しの講演・交流会に、110名も参加し、最後まで、ほとんど帰る方のない熱気と関心。

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奄美で学んだこと
1) スィヌフリに二つ
奄美の方言で、手抜きのことを、スィヌフリという。まさに、たんじゅん農法は、スィヌフリ農法だ。
ただ、スィヌフリにも、二通りある。
人間・自分基準の手抜きと、自然・宇宙基準の手抜きと。
いわゆる、「自然農法」の大部分、何もしない、何も持ち込まない、自然のままがいい、という農法は、前者ではなかろうか。それは、だれかの考えに基づいたもの。誰でもどこでもできる農法にはなりえない。
自然・宇宙基準の手抜きは、自然界・宇宙の法則を知り、いつでも、どこでも、その法則に沿う覚悟がいる。その覚悟をした者だけに、それに応じて、天は、手抜きの仕組みと働きを十分に提供してくれる。手抜き・スィヌフリができるのは、自然・宇宙の法則という見えないものを味方につけるからである。
スィヌフリ農法は、法則に沿う覚悟で、その仕組みと働きにふさわしい環境を用意して、待つこと。
それは、微生物に炭素の餌をやり、飼う農法である。そうすれば、誰でも、どこでも、作物ができる。

2)イッサグレに二つ
おいしいものを食べるのが好き。そんな人のことを、奄美弁で、イッサグレという。
だが、それにも、二通りある。
あちこちの店を訪ね、ネットでおいしいものを探す、いわゆる「グルメ」人も、イッサグレ。
しかし、それでは、グルメなものを用意してくれる人を探すしかない。人間基準のイッサグレ。
それは、人為的な加工食品や、特殊な人の技に頼るものになりがち。
それに対して、自然・宇宙基準のイッサグレがある。
その地域独特の、自然を活かした産物がおいしい。それに手を加えた特産品がある。それがうまい。
奄美でいえば、サトウキビ。それを黒砂糖にして、お茶うけに。焼酎にして、黒糖焼酎に。酢にして、黒砂糖酢。どれも、ほかにはない味。かんきつではタンカン。甘くて味が深い。パッションフルーツ(時計草)やパパイヤもある。それに、田芋という、水田で育てる里芋もある。
ところが、どれもこれも、病気や虫で、近年、できなくなってきて、栽培する農家は、農薬に頼って、頑張っている。だが、それでもできなくて、農家が減っている。イッサグレの口に地の物は入らなくなっている。
だが、しかし、奄美の、熱心な農家、良心的は農家を回ってみても、その原因が肥料にあることをほとんど知らない。肥料が邪魔。肥料は腐敗型の土を作り、作物を虫の食べ物にするが、それは、人間の食べ物ではない。子どもや、アレルギーの人は、それをかぎ分ける。
自然・宇宙基準のイッサグレ、子どもたちが喜んで食べるものは、簡単。土を発酵型にするという単純な方法で、野菜や果物、米は、できる。イッサグレの農産物は作るものではない。できる。
そんな、単純、明快な話に、サトウキビの不作や、田芋の病気であきらめていた方は納得して、元気が出たようだった。

3)食っていける農業に二つ
食べなくては、生きていかれない。だから、農業も、食えることが先決。食って行かれない農は、農業といえない。 いかに、いい農法であっても、それをやると、2,3年は収量が減るかもしれないのでは、生活がかかっている者にはできない。この農法には関心があるが、その点で距離を置いている若者が、そう言った。
そのとおり。現金収入があってこそ、生活できる。カスミでは食えない。
ただ、金もうけに、二つある。1年後はどうでもいいのであれば、今日の金もうけだけを考えればいい。
だが、10年後、20年後、儲かる農業をしようとすれば、いまのままでいいのか。土が病気で、しかも、その原因が、肥料にあるのであれば、それをやり続けることで、年々土は悪くなり、作物のできも年々悪くなる。
未来側に立って、カネがかからない、カネがもうかる農業、スィヌフリ金もうけをするには、いまからやることがある。畑の一部でいいから、健康な土にしていく。発酵型の土を作る。炭素資材を入れて、糸状菌に微生物を多種多様に飼わせる。
「若者こそ、未来側に立てる」。そんなことを、気の優しい若者と話した。少し、腹が据わったようだった。

4) 農業資材に二つ
野菜を育てるには、肥料が要る。農業するには、肥料を買わないといけない。それが、自己・人間基準とは、気づきにくい。健康に生きるには、栄養が要る、病気になれば、点滴をする、サプリメントが要る、それには、病院に行ったり、おカネを出して買わないといけない、というのも同じ。
奄美でも、農業資材は、肥料も農薬も買っている。しかも、安いものしかできないので、止める方が増えている。農業をやっているのは、お年寄りか、変わり者。

自然・宇宙基準から観れば、どうであろう。人間が生きるに必要なモノが、食料であり、それを用意するのが、農業であれば、そして、この地球に人間が生きることが必要な存在であれば、農業に必要な資材は、すでにある。というのが、自然・宇宙基準から観えてくる。
奄美には、自然がいっぱい。緑が元気。それに目をつけて、島のなかほどに、パルプの原料を作っている会社があって、船で、鹿児島にそれを運んで、紙にしている。そこから大量のバークが出る。それは、運賃だけで、手に入る。今までは、それはあまり活かす道がなかった。現代の農業から見ても、それは肥料にならない。
ところが、微生物を飼うたんじゅん農法では、バークは貴重な微生物の餌。奄美にも、農業資材は、あった。たんじゅん農法をやっている方は、ほとんど、そのバークを使っている。運賃はかかるが、バーク代はタダ同然。
ただ、バークだけでは、微生物は食えない。初めは、微生物はいない。少ない。そんな畑では、バークを撒いただけでは、ソルゴやライ麦だってできない。そんなたんじゅん農法の畑が、奄美には、たくさんあった。
炭素/チッソ比が、40ぐらいだと、糸状菌が食える。しかし、バークなどは、100近いから、餌にならない。チッソは空気中にいくらでもある。だから、自然基準では、チッソはいらない。だが、それは、窒素固定菌が働いて、必要なチッソを補給してくれる場合のこと。
ところが、まだ、微生物層が豊かでない、草も生えないところでは、窒素固定菌もいない。じっと待っていても、微生物は増えない。バークは元のまま。
それには、ぬかや、発酵鶏糞をぱらぱらと振りまいて、チッソを足してやる。炭素/チッソ比を40ぐらいにしてやる。奄美でも、古田さんは、バークを浅くかき混ぜた上に、鶏糞を握ってはぱらぱらと撒いて、その上から、また、バークを撒いて、野菜がうまくできていた。
その土地のある資材を、どう生かし、微生物と作物のいい環境を用意するかが、人間の仕事。そうすれば、作物は、作らなくても、できる。(元々、作ることなどできないのだが)。
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今後の見どころ農園
・ 小坂田さん(パッションフルーツ、バナナ、水稲、野菜、サトウキビ)、・ 古田さん(野菜各種)
・ 松井さん(たんかん)、・ 柏原さん(野菜 )、・ 賀川さん(パッションフルーツ、マンゴ)
・ 上原さん(トマト)、・ 四本さん(水稲)、・ 龍宮さん(まこも、田芋)

奄美新聞 4月1日(一部訂正)肥料使用の意識変化を  ・・・自然界からの「たんじゅん農法」紹介

肥料や農薬に頼らない農法を学ぶ、奄美たんじゅん会主催の「農と食の講演・交流会」が、31日、奄美市名瀬であった。土壌に炭素を循環させ、無肥料・無防除で作物を育てる「炭素循環農法(たんじゅん農法)」を紹介。参加者は、自然の仕組みと、安心・安全な農作物の栽培法を学んだ。
たんじゅん農法は、乾期で雨が降らない環境下でも、安全で安定した収穫量を確保できるなどとして、ブラジル在住の林幸美さんが提唱した。近年、その農法が日本全国に広まりつつあることから、奄美でも、その講演会を開催、専業農家など110名が耳を傾けた。
自然界に自生する糸状菌などの土壌微生物に、木の葉や枝など炭素素材の餌を与えると、植物の成長に必要な炭素やチッソ、ミネラルが土壌に増えて、微生物の量と種類が豊富になる。しかし、肥料を与えると、それに多量に含まれるチッソによって、その多種類の微生物が死滅して、チッソが硝酸として作物中に残留し、腐敗型の土壌になる。それに虫が寄ってきて、野菜の虫食い被害を引き起こす。
肥料がなくても植物が育つ例として、山林を例に挙げ、「〈肥料で作物を育てる〉という人間の考え方から、自然を先生にした土壌環境整備が肝要。「肥料を使用すれば作物が育つ」という常識を取りはらい、「微生物を飼えば作物はできる」。
この農法は、①土に木片チップなどの炭素資材を入れ、上から5cmの土と混ぜる。(それを土中の糸状菌が食べて分解し、種々の微生物が増えて、発酵型の土になる)②畝を高くしたり、水はけをよくする(糸状菌の活動に酸素が必要で、水に弱いことために、雨対策)。 作物の種類は問わず、微生物が適地にしてくれる。連作も可能。日照りが続いても、水やりはしない、微生物に任せるという、スィヌフリ(手抜き)農法。
ブラジルでは、サトウキビの大規模農園がこの農法で従来の2,3倍の収量を挙げて、注目されて来ている。
日本でも、露地野菜、ハウスイチゴ、リンゴなどの果樹、水稲などで、広まっている。
奄美のこの農法実践者の事例紹介や発酵米のレシピの紹介もあった。
「肥料や農薬をやめれば、土壌が発酵型にかわり、野菜に虫がつかなくなり、おいしくなるだけでなく、土壌が団粒化し、雨による土壌流出もなくなり、自然環境を取り戻すことにもつながる。本物の作物、本来の自然になるか、実験してみませんか」と話した。
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