2月21日開いた第2回目のたんじゅん勉強会、今回は参加者の一人高山さんにレポートをお願いいたしました。
それでは以下高山さんのレポートです。
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さて、今回の参加者はなんと24人。私は、数人の参加かなと思っていましたので想像をはるかに上回る大盛況でした。主催の中村さんもこの人数に少し驚きの声を上げておられました。連絡はFacebookとメーリングリストだけといいますから、炭素じゅんかん農法への注目度の高さがうかがわれます。

第二回目の始まりは、まずハウスの中から。昨年の11月に訪問させていただいたときにはトマトを中心にあたかもジャングルのような状態でしたが、今回は随分すっきりとしています。すくすく育つ小松菜など葉物の畝を見ながら、たんじゅん農法の基本のおさらいからスタート。この基本をかいつまんで言うと「畝間に溝を掘りそこに剪定チップを入れ、畝にはチップを入れず不耕起の状態に保つ」ということ。畝の両サイドに掘った溝で熟成された微生物環境が、畝に向かってじわじわ浸透していくことをイメージすればよいのかもしれません。

次に、隣の畑に移って溝掘りの状況を観察しながら、その意味と少し詳しい説明をいただきました。この畑の畝の間に掘った溝の深さは50㎝。幅は20~30㎝といったところでしょうか。すべてスコップによる手作業で、曲がった畝に苦労の跡が垣間見えます。以下、中村さんの話を要約します。

・掘っただけではだめで、水はけを考えて掘ることが必要。
・最初の一年間はあくまでも助走期間。特に1年目は溝掘りとチップの導入、それに伴う畝立て等、かなり労力が必要だが、基礎固めであり、何回もやる作業ではない。
・埋めたチップは次第に消費されていく(痩せていくOR食われる、ともいう)。
・初回はまだ微生物が活性化していないので、畝の表層にも有機物を入れるとよい。5~10㎝の深さで混ぜてあげる感覚。
・特に冬の間、チップの分解は進まない。この期間は糸状菌という微生物が主に活躍する。この菌はキノコの仲間で、森を作られるときに必要な菌。
・春になると、糸状菌が分解したものを餌として使う菌が増えて活躍し始める。そのときに、窒素などが多い環境だと腐敗につながることがある。それはその畑の前歴による。
・最初は根の浅いものから育てるとよい。そうすると土ができてくるので次第に根の深いものも作りやすくなる
・この畑の溝は、本当は80㎝くらいにしたかったが、手掘りなので50㎝にとどめた。
・水はけのために溝の底の勾配はつけるに越したことはないが、つなげておけばだんだん水が流れるように変わっていく。
・埋めるものはチップでなくても竹でもいいし、野菜の残渣でもいい。竹は糖分が多いので微生物が増えやすい資材。割ってもいいし、そのままで入れてもいい。空気が通るようにしてあげればいい。
・一つの仕事でいくつもの効果が出るようにするといい。一石二鳥ではなく、一石何鳥も狙うようにする。やればやるほど効率化して楽になるのが本物。
・畝の溝芯から溝芯の距離については適正な幅は100~150㎝で、経験上120~130㎝くらいが適当と考えるが、その場所や土によって適正値は異なる。60~65㎝というのもやってみたが作業性が悪かった。マルチを使ったりすることもあるから、その都合に合わせていけばよい。
・畝を不耕起にしたほうがいい理由は、微生物層を崩さないということ。畝にどのようにエサ(チップ等)を入れるのかによる。畝に直接入れるのか、両サイドに入れてゆっくりと、すこし無駄が出るかもしれないがサイドからエサを入れていくのか、それは作物と微生物の都合を優先する方法を選べばよい。その次に人間の作業性が来る。
・畝には透明マルチを使って地温を上げる方法も一緒に合わせてやってかまわない。微生物の最初の活性度を上げるということだから。ただ、それは何回もやる必要はない。
・何かをやるときには、しっかり理解してやったほうがいい。そうしないと自分のものにならない。自分で予測を立て、やる。そして、うまくいったときにはその理由を、うまくいかなかったときにはその理由を検証して次のサイクルを回していく。一つずつ自分の中で確認しながらやっていく。そうしてやっているとだんだん精度が上がる。わかるようになることが重要。誰でもわかるようになる。

いろいろな質問も出てそれに答えていただく形で以上のお話をいただき、参加者の皆さんも、自分なりのたんじゅん農法のイメージがだいぶ明確になってきたように思います。2年目、3年目は必要なチップを補う感覚になるので労力は減り、収穫の質と量は次第に上がってきそうです。畑に向かい合うときには、あせらず、少し気を長く持ち、自分なりの戦略を持って、PDCA(Plan-Do-Check-Act)サイクルを回していくことが重要なのだと実感させられました。

この後、2グループに分かれ、みかんの木の剪定と、トレンチャーを使った溝掘りとチップの埋め込みの実習となるはずでしたが、みかんの剪定のレクチャーの途中、中村さんが左手を怪我するアクシデントが発生してしまいました(中村さん、お大事にしてください)。

この後、1グループにもどり、松崎さんと川上さんを中心に溝掘りの実習と学び合いの時間となりました。トレンチャーについては、見るのが初めてということもあり、興味津々でしたが、深さ1メートル、幅12センチほどの溝がみるみるうちに掘られていく様子はとても面白く、実際に自分の畑でもやってみたいと強く思うものでした。

とはいえ、価格(中古で5万円程度)、大きさ、最初に使うとその後は不要になっていくことなどを考えると、よほどの大面積をやる人でないとなかなか自分での導入は難しいのかもしれません(わたくし自身は、知り合いに畝立て機を借りて、畝間を少し掘り、そこに手作業で掘り下げるようなことをイメージしています)。

松崎さんからは、トレンチャーを両サイドから掘り進めて、途中で溝をつなげるように掘る実地とポイントの解説をいただきました。二本の溝を合わせるときに底が浅くなってしまうところに注意をすること、溝掘りからチップ埋め込みまでの一通りの作業を一日6時間の作業で60メートルするのが上限ということ(※)、さらに、チップについては畑のエサなのだからあまり発酵が進んだものではなく少し生に近いものを入れたほうがよいのではないかということ等を伺いました。

※この作業スピードは、トレンチャーから手を話して掘らせているうちに(危険を伴うのであくまでも自己責任になります)、チップを運び、埋め込むというように、複数の作業を並行して進めるような工夫をしているとのことです。最初のうちは、確実に一つ一つの作業をこなしていくことが肝心ではないかと感じました。

日が傾き、寒さを感じるようになったところで今回の勉強会は終了。みなさん得るところが多かったと思います。わたくし自身も、また次回の勉強会を楽しみにしています。主催の中村さん、教えていただいた皆さん、ありがとうございました。

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