おぐらやま農場だより その263 2017・06・11 >より転載

先ほど、2日間に渡って開催していた「切上げ剪定講座」が終了しました。2日とも内容が濃く、おぐらやま農場の圃場もたくさん廻ってもらい、実地で様々な講習を積むことが出来たと思います。

広島から道法正徳さんに来てもらって、いくつかの植物ホルモンで植物が生長している原理を学んでいくのですが、いかんせんこれまでの常識が頭に残っているうちはなかなか話が理解できないのです。

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「果樹の徒長枝は切ってはいけません。徒長枝こそが一番大切な枝。ヘタに切るならまだ何も触らない無剪定の方がマシです」

「花摘みもやらないで。かえって木が弱りますよ。木を大事にしているつもりで虐待しているのと同じですよ」

「土づくりこそ農業の肝だと信じてやまない人がここにもたくさんいるでしょうが全く無駄です。きっと信じてもらえないんでしょうけれど」

「畑の石は拾っちゃいけません。美味しい作物を作りたければ、毎回畑へ行くまでに道端から石を拾って少しずつ畑へ投入していきましょう」

「剪定の時に、日当たりが良くなる形を作ろうとしますが、これも全く違います。少々陰になっても大丈夫なんです。そして木の幹に直射日光を当ててしまうとかえって樹が弱りますよ」

「樹を弱らせないと花芽がしっかりつかないから、如何に樹を弱らせて、枯れないように肥料と農薬でコントロールしていくかが果樹栽培のベースの考え方になっている。でもそれは全く反対なんですよ。如何に樹を元気にするか。本当のベースはそっちなんです」

「その根本を真逆に発想転換しない限り、今の農家は皆つぶれてしまうよ。ビジネスとして成り立つよう何をしなければならないか、しっかりと勉強していって下さい。収量も品質も作業性も格段にアップする道をこの講座ではっきり提示したいと思います。」

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道法さんのこれまでの歩みは、セオリーの反対をひたすらに提示してきた歴史です。広島県内の農協技術指導員だった時代には、これまでの定説でみかん農家を指導しても全く結果が出ないことに疑問を持った道法さんが、上司とやり合っても、組織に左遷されても、一つ一つ検証してきた事実の積上げと、その事実の後追いとしての理論は、これからの農業技術の希望と言ってもいい。

そして作物が遺伝子の中に持っている能力、植物ホルモンの産生と調節能力を最大限に活かしていく具体的な方法もとても洗練されてきています。

今回はおぐらやま農場での実地講習時間がたくさん取れましたので果樹園・野菜畑の具体的な課題をいくつもこの場へ投げ込むことが出来ました。例えば、加工トマトの仕立て方。例えば、矮化りんごの仕立て方。如何に早く枝を縛り上げるか。具体的な優れた道具はないか。

もちろん道法さんはそれに対しての解決策を提示してくれますが今回2日間で参加があった延べ50人ほどの中からも次々とアイデアが湧き出してくるのです。

道法さんも参加者もその化学反応を心から楽しんでいる。これが健全なリーダーシップと、組織に頼らない自立した一人一人が力を合わせて積み上げる「現場の知恵」です。

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< たんじゅん農法はどこへいった? >

最近、道法さんの切上げ剪定にかぶれているものですから、「松村君、もうたんじゅん農法は止めたの?」。「宗旨替えですか」と言われることがあります。

苦笑いしながら
「もともとたんじゅん農法なんてありませんからね。こうやったら炭素循環農法だといった瞬間からそうでなくなりそうなものなんで、やめるとかやめないとかどう答えていいのか難しい所ですね」

「じゃあ土づくりはもうやめたんですか。たんじゅんは土づくりが命じゃないですか。それにたんじゅん農法は灌水しないで作ることになってましたが、道法さんは水やりは何よりも大事っていってましたよ。」

「そうですね。でも土づくりっていったいなんでしょうかね。たんじゅん農法は水やりをしないというのもなにか偏ってますね。<誰が何を言ったか>を基準にどこまで作物の世話をしても、ぐるぐる同じところを回っているだけになりそうですね。」

 

○○農法・○○栽培って、名づけたり方法として体系立ててまとめていく事も、一つ一つの説を丁寧に学んでいくことは大切だと思うけれど、僕はやっぱり現場で何が起こっているのか(踊る大捜査線みたい。事件は現場で起こっている!)そこで作物や畑たちとどれだけ対話できるかその一点にかかっていると思うのです。

そういうことで、宗旨替えとか、乗り換えたとか、そういうモノでもないと思います。農業の世界は探求しても探求しても、尽きないから楽しいのです。組織団体のとらわれを越えて、目の前にいる作物や畑たちと、息を合わせていくための学びの日々が続いています。

信州安曇野 おぐらやま農場  松村暁生