その後

一度は通らなければならない浄化現象(虫食い)
凸凹まだら現象(生育むら)
資材の活用?(今を忘れないで・・・)
土の履歴(堆肥は危険)

その後

まだ土壌物理性(特に通気・透水性)が十分とは言えず、微生物による有機物の処理能力や、肥効成分(主に無機態窒素)の生物化も今ひとつ。土は病み上がり状態で、まだ体力不足です。
有機物処理能力に合わせ、高炭素資材でも少なめに使う。排水に配慮し、好気条件で働く糸状菌を酸欠死させないなど、基本的な対処法が重要です。土の浄化過程で起きる、生育ムラ、虫食いをなくそうと対症療法に頼り過ぎ、基本を忘れないで下さい。
対症療法: 時には必要だが症状を抑えるだけの処置。漢方的農薬(ストチュウ、木酢液など)の散布、EM活性液の土壌注入など、一時しのぎ的な対処法。いわゆる、有機(堆肥)農法の防除技術=施肥・防除農法の技術。
一度は通らなければならない浄化現象(虫食い)

転換後4年経過した家庭菜園。生育不良(餌不足が原因)だからと以前の使い残しの鶏糞をパラパラと・・・。施肥の恐ろしさを思い知らされるワンショット(但し幼虫は全くいない)。

転換後1年のキャベツと、2年のハクサイ(同一農場)。キャベツは、まだ虫食いが目立つ(幼虫は既にいない。ナメクジやカタツムリも消えてしまった)。
基本に忠実に従えば(繰り返しトウモロコシの残滓を鋤込んでいる)2年で、このようなハクサイができる。画像は成育途上のもの、キャベツは中玉、ハクサイは大玉が収穫できた。
転換初期に必ずといって良いほど起きる現象に、極端な「虫食い」があります。第一関門です。慣行栽培の時より、遙かに酷い食害を受けるのが特徴です。ハクサイなど葉が網目状になり向こうの景色が透けて見えます。もし、この現象が未だ現れていないのであれば、浄化以前の状態であると考えた方が良いでしょう。

この際、注意深く観察して下さい。幼虫(青虫やヨトウ虫など)が全く見られず、飛来する成虫(テントウムシダマシなどの甲虫類)だけによるものなら、土の浄化が順調に進んでいる証拠です。
この現象は土がある程度、きれいになったがまだ不十分。微生物による養分供給量も少し足りないという時に起きます。また一旦、土がきれいになったが養分が足りないからと、肥料(化学肥料、堆肥、畜糞など)を施用した場合にも現れます(写真)。

一見、同じように見える虫食いでも、幼虫がいるようなら、典型的な施肥状態で単なる「施肥障害」。施肥・防除農法(慣行農法、有機堆肥農法)から、いきなり無農薬にした場合などによく見られます。土の浄化が全く行われていません。

土壌中に有り余るほどの無機態窒素があると、肥効成分の吸収抑制作用が見られます。これは過剰吸収を避ける自己防衛機能。生物の生理から考えて当然の機能です。施肥農法で施肥量を増しても効率が落ち、施肥量増に収量増が比例しないことでも明らかです。

ところが肥効成分が減り、微生物からの養分供給も、まだ不十分。このような、養分の絶対量不足の状態になると、少しでも多く吸収しようとします。すると、残っている無機態窒素の分に見合う他の成分がないため、相対的な窒素過剰状態に陥ります。つまり肥料汚染に対する防衛機能減退の結果が、異常な虫食い現象なのです。
肥料汚染に対する防衛機能減退: 養分吸収能力の正常化。減肥状態では施肥効率、家畜なら飼料効率が上がる。ダイエットなら小食で一時体重が減っても、その後カロリー摂取量減少の割には体重が減らない状態。
土壌中の硝酸濃度を計ることで、客観的に知ることができる。施肥栽培における無機態窒素適濃度は10~40mg/100g(乾土)。無施肥で虫も付かず慣行並み(以上)の収量が得られる土や、痩せた土手土では、その1/100前後の、0.2mg/100g程度。この両者の中間状態で起きる。

「硝酸の減少過程=浄化過程」で起きるため、通常は避けることはできません。一~二作は全滅の覚悟が必要です。しかし焦らず、直接の被害のない緑肥栽培に置き換えれば最小限の被害ですみます。基本である、高炭素資材による「無機態窒素の生物化」を継続することが唯一の対処法です。
凸凹まだら現象(生育むら)

転換後2年経過し、順調に硝酸態窒素の生物化が進んでいる。そのため、二種類(手前と奥)のレタスとも病虫害は全くない。しかし、画面の左側が極端に生育不良。
乾期のため一応、潅水用チューブを準備したが今は全く使われていない。乾期には、定植から収穫までに全く降雨が無いこともある。しかし、この状態になれば定植時以外は潅水の必要がなくなる。

虫食いキャベツ(左上部の写真)を収穫。既に外観は商品としては並。しかし、炭素循環農法から見た品質は40点。レタスは上の写真右奥の成育良好部分の物を収穫。大きさはキャベツ並、巻きも堅くズッシリと重い。外観は文句なしだが、質は辛うじて合格点といったところか。あと1年経てば質でも90点以上は確実。
無施肥に転換し、しばらく(大量施肥圃場や寒冷地で1~2年、自然猿真似農法からの場合や冬のない地域なら0~12ヶ月)すると同一圃場内でも凸凹ムラが目立ち、生育不良(成長が遅い)や病虫害、極端に葉色が薄い・葉が硬い(養分不足)、などの症状が、まだら状に発生することがあります。また、環境変化(降雨や日照、温度変化)に対する反応も一様ではありません。

「これはおかしい、やり方が間違っているのでは・・・」、しかし心配ご無用。まだら現象=回復現象=好転反応です。それなりに順調に土が変わっている証拠で、対処法さえ間違えなければ一過性です。

同一圃場内でも、微妙に土壌条件に差があり、土壌改良は一様に進みません(写真)。この時期は、好条件の所から無機成分の生物化がほぼ完了。しかし土壌の硝酸濃度は、最終状態の数倍~10倍程度(1~2mg/100g)。一応、虫に食われなくなりますが、野菜の質は50%程度の出来。あと一歩で名実共に無施肥状態となります。
無施肥状態: 微生物相が豊かなら生育良好で虫も付かない。貧弱なら生育不良(養分不足)、虫は付かないが果菜類などは持久力がなく菌に冒されやすい。

条件が悪いところは、表面上の無施肥と違い内実は施肥状態のまま(土壌中の硝酸濃度測定で判断できる)。未だに無機態窒素が肥となっています。
施肥状態: 生育不良で虫も付く。生育良好(肥効成分が十分)でも虫が付く。

この時期は無施肥であっても、土壌条件の良否から、実質的には無施肥と施肥が、まだら状に分布しているわけです。この時の「肥」は、転換以前の残留・肥効成分だけでなく、微生物相が貧弱で作物残滓や投入された資材が無機化し、肥効を発現しているとみるのが妥当。
ですから、米糠やボカシなどの無機化しやすい資材を大量に使うのは厳禁。使えば現行の有機農法・自然農法で最も多く見られる状態で、何時まで経っても完全浄化に至りません。米糠やボカシは薬と心得、緑肥混ぜ込み時の微生物活性化に、使い切るだけの極少量(10g/平米)を使うにとどめます。
資材の活用?(今を忘れないで・・・)

「何々のおかげ」。これを裏返せば「何々のせい」。よく聞きますが何のことはない単なる責任転嫁、責任逃れ。これではお話になりません。また、頭痛に胃腸薬を飲ませたり、熱が下がったのに解熱剤を飲ませ続けるのと、同等な行為をよく見かけます。
そして、そのような者は決まって何々は「効かない。ダメだ」と異口同音に宣うのです。自己中心に物事を捉え、自然農法の基本中の基本「自然が基点」ということを全く理解していない証拠に外なりません。どのような結果であろうとも、特定の「何々」の問題ではなく、自分の行為(思考)の結果です。

時には、断食や投薬、補助食品なども必要です。しかし、回復し始めれば、重湯、おかゆ、普通食へと徐々に戻したり、投薬も止めるのが当たり前。ところが「効いたから」と特定資材(方法)にこだわり、何時までも使い続けて「ああでもない、こうでもない」と悩業?脳業?(笑)。問題を複雑にして、二進も三進もいかなくなっている例が多すぎます。特に効果が高い米糠や微生物資材などで、この罠に嵌ります。

もうこうなると、病的(精神の)。特定資材依存症?とても言ったら良いのでしょうか。「何かを与え作物を作る」これは施肥農法の思考。自然農法ではありません。裏には自己中心から来る依存心、そして不安と恐怖。
そもそも、万能資材などというものはありません。物は使いよう。どのような資材でも使い方次第で良くも悪くも作用し、「場」の状況次第で善にも悪にもなります(院内感染(日和見感染)がその好例)。

土ができ上がれば餌以外、何一つ必要ありません。しかし、転換期の土壌は日々変化して行きます。土(土壌微生物群)に“今”どのような環境を与えれば良いのか、何が必要か。それが作物の明日にとって何を意味するのか、微生物の「立場」、作物の「気持ち」になって考えればよいのです。明日を思えば今が決まります。過去ではありません。
過去ではありません: 「これを使ったら微生物が増える。これは抗酸化物質を作る。」などの結果。未来に必要なものは過去に役に立ったもの(結果)ではない。
人は下僕(微生物飼育係)。自然が主ということを、くれぐれも忘れないようにして下さい。
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土の履歴(堆肥は危険)

虫食いがなくなればもう大丈夫・・・?。いえ、世の中そんなに甘くはありません。更に不思議なことが・・・。土が確実に良くなっている筈なのに「作物の味が良くならない」「再び虫に食われる」など、致命的にはならない程度の「逆戻り現象」が高頻度に見られます。これも土が良くなった証拠ではありますが少々厄介です。
逆戻り現象:
硝酸態窒素や汚染物質が僅かに吸収されているため、軽度の虫食いや活力低下時に見られるアブラムシ、ダニ、各種のカビ病などがだらだら続く。似た現象に作物自体が弱ってしまう情報汚染があるが、これは土壌の完全浄化後でも、森林を切り開いた処女地(新開地)でも起きるため、容易に判別できる。

施肥状態では、作物に殆ど使われることがなかった土壌深部(地下、数十cm~3mほど)の高度汚染により現れる現象です。化学肥料、堆肥や腐敗しやすい有機物(畜糞など)の継続的な大量施用(堆積)、腐敗物質の大量投棄の跡地などで起こります。特に長期にわたる、畜糞堆肥・生ごみ堆肥による有機農法は、常にこの危険を孕んでいます。
耕土層(上層部)の浄化が終わり硬盤・腐敗層がある程度消えると、作物は地中深くまで根を張るようになります。その結果、土壌深部まで浸透してしまった汚染物質を吸い上げてしまうのです。過去の中途半端な自然猿真似農法では、上層部の浄化は比較的簡単にできても、積極的にエネルギー(炭素)を補給し、深部の浄化を行わないため、この現象が現れやすいと考えられます。餌不足でバイオマス(生物量)が十分増えなければ、深部の浄化に長期間を要します。
また、高炭素資材以外のもの(米糠、ボカシ、落ち葉堆肥など)を常用している天然堆肥農法?の場合は、この段階に達していないと思って下さい。悩・脳業も同様です

過去のツケは必ず払わされます。葉野菜中心なら、それを作り続けるだけで特に何もする必要はありません。栽培期間が長い作物(果菜類など)が専門の場合の対処法は、目的の栽培作物より根が垂直に深く入る緑肥作物(トウモロコシは2m以上)などで、汚染物質を吸い上げます。
同時に根に心土を耕させ、その根を枯らし微生物の餌とし、通気性を改善、酸素を供給し汚染物質の分解(生物化)を早めます。この際、緑肥作物(貴重な炭素源)はその場に鋤込み原因成分と共に分解させます。但し重金属などの分解不可能な汚染物質の場合は例外、持ち出して処分して下さい。

そして浄化が終わるまで、汚染物質の吸収・蓄積を避けるため、栽培作物は養分吸収力が強く何でも蓄積しやすい作物(サツマイモなど)や根の深いものを避け、できるだけ根の浅いものを選びます。
耕土層のように、天地返しをして大気に曝せない深層部は、根気よく「分割払いで過去のツケを払う」以外に方法はありません。

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